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那覇家庭裁判所 昭和56年(家イ)19号 審判 1981年7月31日

申立人 金山幸一郎

右法定代理人親権者母 金山計子

相手方 アルバート・ロビンソン

主文

申立人と相手方とは離縁する。

理由

一  申立人法定代理人、相手方代理人の各審問の結果、その他一件記録によれば、申立人は昭和四二年五月二五日出生したところ、昭和四九年三月二六日、申立人の母である金山計子が、沖縄県に在住していた相手方と婚姻し、相手方は、家族手当の支給を受けるための便宜から、同年四月一五日、当時祖父母の許で養育されていた申立人と養子縁組の届出をしたものの、申立人とは同居せず殆んど顔すら合わせたことがなかつたうえ、同年五月、仕事の都合でアメリカ合衆国へ帰国するに際しても、右計子および申立人を沖縄に残したまま単身帰国し、帰国当初、音信があつたのみでその後は音信が跡絶え、送金もしてこないことから、右計子は相手方との離婚を決意し、相手方の所在を捜すべく手を尽していたところ、相手方からも右計子に対し離婚したい旨の連絡があり、昭和五三年六月一二日、アメリカ合衆国テキサス州の地方裁判所において、右両名の離婚の判決が確定したこと、相手方は、右判決により、申立人の従保護者として月額一二五ドルを養育費として支払う旨命じられていたにも拘らず、数回その送金があつたのみで、右計子が請求しても埓があかず、仕方なく相手方からの送金を受けることを断念したこと、申立人は相手方が帰国した後は、母計子と一緒に生活し、現在および将来に亘つても渡米する意思はなく、相手方と母計子が離婚した現在においては、相手方との離縁を強く希望しており、一方、相手方においても、離縁に同意していること、以上の各事実が認められる。

二  ところで、本件離縁については法例一九条二項により養親の本国法に準拠すべきところ、養親の本国法であるアメリカ合衆国テキサス州法においては離縁が認められておらず、同法に準拠する限り、申立人と相手方とは離縁することはできないこととなる。

しかしながら、本件において離縁を認めないとすれば、前記のとおりの養親子としての実体を全く伴わない親子関係が単に形式的に継続するのみであつて、離縁を強く希望している申立人並びに相手方の意思にも反することになり、また、今後、真の親子関係が築かれることを期待することも困難であり、このようなことは養子である申立人の福祉に添わず、また、養子縁組制度が養子の福祉をその本旨とすることに鑑みれば公序良俗に反するものと言わざるを得ず、かかる本件においては、法例三〇条により外国法たる養親の本国法を適用せず、離縁を認める法廷地法である日本民法を適用するのが相当であると解する。

三  そこで、本件においては離縁の調停を為し得るところ、相手方はアメリカ合衆国テキサス州に居住し、遠隔地のため調停期日に出頭せず、相手方代理人のみが出頭しているが、当事者の自由意思を尊重すべき身分行為である離縁については代理に親しまず、右調停を成立させることができない。

しかるに、前記のとおりの事実が認められ、相手方においても離縁に同意している本件においては、申立人と相手方とは離縁するのが相当であると認められる。

四  よつて、調停委員比嘉良夫、同知名栄子の意見を聴き、養子の福祉その他諸事情を考慮し、家事審判法二四条により主文のとおり審判する。

(家事審判官 兼島方信)

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